第7話


『What is it.(何の事?)』と惚けることもしなかった。



心音の反応に―――確信した。



マックスにバラしたのは心音の意図してやったことだ。けれど心音も誰かに―――ううん…




啓―――に頼まれたからだ。





啓は一週間ちょっと悩んだ、と言っていた。振り返るとそれぐらいの時から啓の様子が少しおかしかった。



心音を送っていく空港内でも、妙に心音の方を気にしているようだったし。だからあたしは二人を快く送り出した。



あたしに話せない話題があったとしても気にならなかった。



信用していた。



だから敢えて『何を話したんですか?』と聞かなかった。



けれどその時点で啓は悩んでいたのだろう。



急にどこかへ行こうと誘ってきて、そのうえそれ以上のことはしない。気分じゃないのかと思ってあたしもそれ以上を求めなかった。そもそも体の繋がりだけが全てではないのだ。



あたしには一緒に居て、二人同じ景色を見て、同じものを食べて、二人で顏を見合わせて笑い合える、それだけで充分幸せだった。



啓は時々、『どこか遠くへ行きたい』と滲ませていた。



あたしたちの最後のキスは―――





あのリムジンの中。




キスと一緒に、リムジンに感情を置き忘れてしまえれば楽なのに―――



啓は自分を『強くない』と言った。



それはあたしも一緒。





あたしだって強くない。




あのリムジンは―――今、どこへ向かっているのだろうか。



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