第6話


スマホを持つ指先が雨で濡れているからか、滑りそうになりながらも何とか持ち堪える。



それは、自分の足取りと一緒だ。本当は―――何かに掴ってないと今にもふらつきそうだ。



『目的』と『感情』がないまぜになり



気持ち悪くて胃液がせり上がってきている。その苦しみだろうか涙が出そうだ。それを呑み込むようにあたしは何度も鎖骨辺りを手で押さえた。



その場所に、啓とお揃いで下げたリングが揺れていた。一度チェーンが切れて、新しいのに変えたばかりだ。



その冷たい指先に、雨より冷たい感触だけが触れては離れ、触れては離れ…を繰り返している。



『Hey,瑠華、大丈夫?何があったの?順を追って説明して』と心音が本当に心配そうにゆっくりとそう言って、その声のリズムとトーンは、いくらか落ち着きを取り戻してくれた。



あたしはさっきのカフェ『アロマルージュ』で話した内容を話し聞かせた。



地下鉄はやめて、徒歩で帰るにはちょうどいい話題だ。



全てを話し聞かせると



『Darn it !(ちっ!)』心音は舌打ち。けれど『それでケイトがあんたと別れるって?そんなことで?あんたの言い分も聞かずに?』と心音はさらに声を低めた。



「それは―――……」



あれが本心なのか、そうじゃないのか分からない。



ただ、あたしはまだバカみたいに縋りつきたいのかもしれない。



『二村さんに卑怯なことを言われたんでしょう。



本当は本心じゃないんでしょう?』



と、でも?



「ねぇ、心音、あたしたちが昨日ハロウィンパーティーするって言ったの覚えてたよね」



『Ye――ah!(ええ)』心音はあっさりと言った。






「Who asked you to do that?(誰に頼まれたの?)」






あたしの質問に、心音は沈黙した。



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