15曲目 1回戦に向けて

 予選通過から数週間、一回戦に向けて制作陣が準備をしていると同時にスターラビットは卒業や受験を乗り越えながら動画の投稿とレッスンに力を注いでいた。投稿では踊ってみた動画や流行りの音源に合わせてポーズを決めたり、動いたり口の動きを合わせたりと動画投稿を続け、まだ少ないもののファンは確実に増えていた。

「緊張しているよ。トークなし、歌を歌うだけとはいえ、初めてだもん」

 そして今日はいよいよ初めてのショッピングモールライブの日だった。歩は衣装に身を包み、ヘアセットを行いながら呟いた。

「確かに対面ライブとかやったことないもんね。僕のお母さん見に来ているよ」

「うちも家族総出で来るらしい」

 由春にメイクをしてもらっている周音は苦笑した。

「俺らもクラスメイト来るらしい。蓮太郎も言われてたよね」

「う、うん、本当に緊張するよ」

「いつも通りにしておけばいーべ。大丈夫だろ」

「そうだね。変わらない俺らでやれば大丈夫」

 大貴はそう言うと、立ち上がった。

「さぁ、頑張ろう」



 結果、スターラビットの初ライブは大成功だった。パフォーマンスは盛り上がり、記念すべき初めての歩の推しカメラが投稿された。それにより知名度はさらにあがり、フォロワー数も増えてきた。ステージを見たクラスメイトの中には未だに認めようとしないクラスメイトもいたが、ほとんどは彼らの本気に笑うことなく、応援してくれるようになった。

様々な方向で盛り上がっていく中、ついにスターラビットの一回戦に向けた新曲が決まった。

「今回の曲は【小文字のi】っていう曲です。テーマは学校の片想いだから、衣装は制服をイメージしてます。一回戦に向けて頑張ろう!」

 多喜は歌詞カードを配った。

「今回の曲、めっちゃ可愛いよ、プロデューサー!恋心って感じ!」

「あ、ありがとう」

 歌詞を読んだ由春に褒められて、多喜は照れたように笑った。

「今回の曲は、センターを大貴君にやってもらうのでまたフォーメーションが変わるからよろしくお願いします」

「お、俺?」

「大貴君がセンター!いいじゃん、大貴君の大人っぽさが映える曲の感じあるもん」

 歩は瞳を輝かせて大貴を見た。他のメンバーからも拍手が送られ、大貴は小さく笑って頷いた。

「よし、頑張ります」


[スターラビット 投稿動画]

 チャンス同盟の曲に合わせてサビのダンスを上半身だけで動画。

 下段が同い年トリオ、中段が年下組、上段が年上組に分かれている。

[コメント欄]

《緑、コメント欄に被ってて不憫すぎるの草》

《歩くん!!!!!!》

《ピンク、めっちゃ可愛い》

《水色も可愛いぞ》

《かっこいいの?これ》

《まぁまぁイケメン》

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