14曲目 グループのSNSアカウント作成

 予選通過ができたことで次の一回戦に向けて出場グループはいくつか課題を与えられていた。その課題の中にSNSアカウント作成がある。グループのアカウントを作り、ショート動画を投稿することでファンを増やせということだ。フォロワー数やいいねの数を増やし、大会自体を盛り上げてほしいという目的でアカウント作成を命じられているが、フォロワー数自体は実際の大会の成績には影響しない。また、公式サイトからファン達に各推しグループの切り抜き動画、フリーライブ中の推しカメラは積極的に認められているが、彼らの日常を盗撮するなどの行為は禁止されている。そのようにして公式は大会を盛り上げ、ここまで大きなイベントに成長させていた。また、課題の中には地域イベントなど公式が開催するライブ以外でゲスト出演することが認められているので積極的に参加してほしいというのもあった。アカウント同様大会を盛り上げるためであり、この時期になると様々なショッピングモールからライブの出演依頼がそれぞれのグループに入るようになる。ただし、公開したことのある曲しか歌ってはいけないという条件がある為、曲が限られてしまうという点がある。

そして、大会の成績に直接影響する課題として出されたのは新曲の発表だった。次の一回戦はパフォーマンス動画を公式アカウントで投稿し、視聴者が投票するシステムだ。

「ということで、次の曲を作るんだけど」

 興奮冷めない様子で目を輝かせているメンバーを見て、多喜は腕を組んで考えた。

「テーマは恋愛。アイドルなら通る恋愛ソングを歌ってもらおうと思う」

「いいね!恋愛とかまだ俺したことないけど」

 歩はアイドルっぽいと手を叩いて喜んだ。

「幼稚園の先生をカウントしていいなら僕は経験済み!」

「いや、ノーカンだろそれ!」

「それなら俺だって幼稚園の頃の思い出あるよ!」

 胸を張った由春にツッコミを入れる和哉と育の隣で蓮太郎は頬を赤くして照れていた。

「まぁまぁ、大貴はどう?」

「ん?俺?高校二年の時、恋してたよ。今は何もないけど」

 周音が問いかけると大貴は微笑みながら答えた。その答えに全員の視線が大貴に集中した。

「大貴君、彼女いたの!?」

「いや、彼女じゃなかったよ。片想いだったし、伝える気なかったし」

 末っ子の質問に大貴は優しく答えた。どうして告白しなかったんだと言わんばかりの顔をする年下達に大貴は顎に手を当てた。

「自分の中に留めておきたかったんだよね。伝わって関係が壊れて何もなくなるのが怖かったのもあったと思うけど。でも、伝えなくてよかったとは思うかな。こうやって皆に会えたし」

「だ、大貴の兄貴ー!」

 育は感動したと腕で涙を拭う仕草をした。

「大貴君、ありがとう、良い歌詞が書けそう」

 いつの間にかメモ帳を用意してメモをする多喜に大貴はお役に立てたのならとまた微笑んだ。

「そうそう、アカウントだけど動画投稿のネタとかは皆に任せようと思うの。皆ならそんなにぶっとんだことしないと思うし」

 多喜はメモ帳を仕舞いながら説明を続けた。

「自己紹介動画とか踊ってみたとか今のショート動画の流行を上手に使いながらやっていってほしいかな。メンバー皆で集まって撮らなくてもいいし、皆で集まって撮ってもいい。勿論一人でもね。ただ、投稿はできるだけ続けてほしいかな。こういうのは継続性が大事だから。個人アカウントがない分、このスターラビットのアカウントで頑張ってほしくて」

「了解!プロデューサー、俺達頑張るね!」

 歩は力いっぱい頷いた。

「あと、早速なんだけど、隣の市のショッピングモールでライブが決定したりしているから、忙しくなると思うけど頑張ろうね。それぞれ、進級や卒業式はあるから、日時がわかる奴は教えてもらえると日程調整するっておじいちゃんが言ってたよ」

 ライブ決定にスターラビットは全員で手を合わせて喜んだ。


[スターラビット 投稿動画]

 スターラビット自己紹介動画。自撮り風にスマホを代わる代わる持ち、メンバーカラーの文字で書いた自己紹介文をのせておく。

[コメント欄]

《赤の子、かっこよすぎる》

《ピンク色の由春君、可愛い》

《よく見たらかっこいい》

《紫、推します》

《オレンジの子、笑顔がいい》

《黄色の荒木くん、イケメン》

《水色可愛い》

《なんか微妙じゃない?》

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