6曲目 チャンス同盟
「うんうん、いいね」
多幸はスターラビットの反応に満足そうに頷いた。
「そして次に紹介するのが君達のタンスを担当してくれる人と作曲家兼ボイストレーナーだよ。入って!」
多幸に紹介され、二人の男性が入って来た。
「どうもぉ!ダンサーのカレイよぉ!よろしくね!可愛いダンスもかっこいいダンスもエキセントリックなダンスも私にお任せ!」
派手な衣装に身を包んだカレイはスターラビットに向けてウインクをした。
「初めまして。
シンプルな服装とハットが似合う田口は上品に頭を下げた。
「二人とも私の知人の紹介で出会ったんだ。今日から一緒に突き進んでくれるよ」
「早速オリジナル曲を練習して予選のビデオ戦を勝ち抜くわよ!」
「皆様、バシバシ指導させて頂くのでよろしくお願いします」
やる気満々の二人にスターラビットは真剣に頷いた。
「では、早速そのオリジナルソングを発表しようか」
多幸はデモ音源を流し、それに合わせてカレイが躍り出した。その姿を見て、スターラビットの面々はさらに顔を輝かせた。
「曲名は【チャンス同盟】。作詞は多喜。今から歌詞カードを配るね。そしたら、多喜にこの歌詞の説明をしてもらおうかな」
多喜は多幸によって全員に歌詞カードは配られたのを確認すると緊張した様子で口を開いた。
「このコンテストに挑戦しようと思った皆のことを応援したくて、挑戦をテーマに書いたの。同時にこれから挑戦したいと思える人にも向けて。あと、この歌でもトリックスターっていう単語を使っていて、それを使ったのは、その、何て言うのかな」
多喜はしどろもどろに視線を動かしながら頭を働かせた。歌詞をここまでちゃんと完成させたのは多喜の人生で初だった。想いを込めて書いたが、この曲がアイドル部コンテストの予選を勝ち抜く重要な曲だと思うと緊張と責任感で手が震えてしまった。
「大丈夫だよ、俺らプロデューサーを信じているからさ」
震える手を見て察したのか、周音が優しく微笑んだ。
「あ、ありがとう」
その微笑みに少し緊張が和らいで、多喜は大きく深呼吸した。
「さっきも言ったけど、トリックスターは印象の悪い意味がある中で、物語を展開させるために必要になったり、秩序を破壊する一方で創造者でもある。この歌詞で使われているトリックスターは破壊するのは挑戦したいけど自分なんかって思ってしまう、新しいことに踏み出すことを怖く思ってしまう自分自身の世界のこと。つまり、自分自身がトリックスターになって、どうせって思ってしまう自分の世界を壊して新しく作り上げよう!っていうことを想って書いたの」
「凄いよプロデューサー!」
歩は歌詞カードから顔をあげてキラキラさせた瞳で多喜を見た。
「俺ら、頑張るね!」
育も左右に座る蓮太郎と和哉の肩に手を回して笑った。二人も小さく笑って、多喜を見つめた。
「俺ららしくパフォーマンスしてみせるよ」
「頑張る!」
大貴と由春は歌詞カードを何度も読み返し始めた。メンバーの反応に多喜は目を見開き、鼻の奥がツーンとなったのを感じた。初めて、自分の得意なことを、好きなことを続けてきてよかったと思った。一人の世界に閉じこもって、自己満足な世界を創り出し、孤独でも満たされていた世界にいたが、初めてその世界に住民が現れた気分だった。
「だから言ったでしょ?大丈夫だって」
感動する多喜に周音は微笑んだ。
「さぁ、歌詞の意味がわかったところで早速レッスンを始めるよ。歌割もダンスの立ち位置も決めてあるからね。ビシバシ行くよ。今回の曲のセンターは歩君だ。頑張ってね」
「はい!」
歩は嬉しそうに頷いた。
「勿論、センターじゃなくても、皆には輝きがあるのだから頑張ってほしい」
多幸がそう言うと、スターラビットは勢いよく手をあげた。
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