5曲目 スターラビットの誕生
初顔合わせから一週間ほど経った日曜日、多幸によって集められたメンバーは動きやすい服装でレッスン会場に来ていた。ホワイトボードの前に座り、ジャージ姿の多幸と多喜を見つめ、グループ名の発表を今か今かと待っていた。
「グループ名はこれです」
多喜はホワイトボードに『スターラビット』と書いた。
「飛躍の象徴でもあるウサギでスターを目指す『スターラビット』のコンセプトは『トリックスタールーキー』。アイドル部コンテストは年々レベルがあがっていて、ダンス大会優勝者とか普通にいるグループもあるし、うちよりも全然お金をかけるグループもいる。元アイドルがプロデュースしてアイドルとしてのノウハウが完璧なグループもいれば、ご両親が有名人だったりエンターテインメントに詳しい人間だったり、はたまた作詞家とかボイストレーナーとか、とにかくプロレベルのグループがたくさんいる世界。募集要項に事務所に所属していないとか芸能人じゃないとかそういう制限もない。でも、うちは完璧演者は素人だし、プロデュースをする私達だって堂々と対抗できるほど強くない。でも、それでも私達が通過してあの生放送にでるとなったら、私達で変わる大会の変化があるのかもしれない。ううん、私達の存在がアイドル部コンテストの物語に変化をもたらすようになったらきっと、印象に残る。だから、こういうコンセプトにしたの。トリックスターはペテン師とか何かと印象の悪い意味があるけれど、トリックスターは物語を展開させるためには必要な役回りでもある。アイドル部コンテストを展開させる!っていう思いでやりたいから」
多喜は全てを言い終えるとやってしまったと心の中で後悔した。話過ぎたような気がしたのだ。素人なのに偉そうなことを、大きなことを言ってしまった。まさしく、今こそ穴があったら入りたい。母親にバレた趣味よりも隠れたかった。
「すごいね!プロデュースしたことあるの!?」
そんな多喜に育は目を輝かせながら手を叩いた。
「かっこいいじゃん!俺、気に入った!」
そんな育に多喜は肩を撫でおろした。
「ぼ、僕もいいと思う。その、卵ヶ丘市にも何かあっている気がするし」
育の隣に座る蓮太郎も小さく手を叩きながら頷いた。
「この前優勝したシュバリエは確か、日本でも有名な私立大学、付属高校の生徒で構成されて学校総出でプロデュースされていたって聞いたよ。それの次は俺らみたいなグループだったら確かに印象に残るし、かっこいいかも!」
歩もうんうんと頷いた。
「何かグループ名を言う時の挨拶とポーズ、考えたくなった!」
由春は可愛らしく手を動かし始め、それを見た周音は優しく多喜の方を見た。
「俺も賛成。しっくりきたよ」
「ふわふわしたウサギのイメージと、いたずらっ子で狡猾なイメージのウサギ、表現の仕方がいっぱいあって楽しそうだな」
大貴も親指を立てて、微笑んだ。
「悪くないと思う」
育の隣に座っている和哉も頷いた。
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