4曲目 多喜、プロデューサーになる ※
家に帰る道中、多幸は多喜に問いかけた。
「どうだい?プロデュースする気になった?」
「あんな紹介されちゃ、やるしかないじゃん」
そう言いつつも、多喜のやる気は自己紹介を見た時から漲りつつあった。二次元にしか興味がなく、今日も自己紹介だけ見たら多幸を説得して自然と退こうと思っていたが、思った以上に完成されつつあるメンバーにプロデュースしてみたいと思ってしまったのだ。彼らには二次元のキャラクター達並みの個性があった。
「じゃあ、ユニット名とオリジナルソングの作詞を頼もうかな」
「はぁ?」
さらっと鬼畜な注文を投げる祖父に多喜は目を見開いた。
「だって、小さい頃、よくお人形やぬいぐるみを集めてアイドルを形成してオリジナルソングを歌っていたじゃないか。今だってアニメのキャラクター達を集めて理想のチームを作っているのを知っているんだぞ」
「ちょっと待って!勝手に部屋みたの!?」
「私じゃない!お母さんが掃除した時に出てきて心配だって」
「マジで、もう、お母さん、余計なことを」
幼い頃の多喜は多幸の言う通り、人形やぬいぐるみでアイドルグループと歌を作って歌わせていた。同じ年頃の女の子達が可愛い服を着てアイドルのように歌って踊って真似をしている横で、多喜はプロデュースをしていたのだ。それは今も変わらず、大好きなアイドル育成ゲームや漫画やアニメのキャラを好き勝手くっつけてグループを作ってオリジナルソングを作っていたのだが、まさかそれがバレていたとは思ってもいなかったので多喜は穴があったら入りたい気分だった。ネットには勿論、誰にも言わずに続けていた孤独でありながらも満足感のある娯楽が祖父にプロデュース能力として買われるとは思わなかった。
「あのメンバーを見て、何か浮かびそうか?無理だったら、他の人にも頼めるから深刻に考える必要はない。既にダンスの振り付けやボイストレーニングの先生は見つけているから」
多幸の言葉に多喜は固まった。プロデュースすると決めた以上、その能力の買われた方が自分にとって黒歴史なようなものだったとしても、できる限り関わりたいと思った。他の人に頼むのもいいが、何もせずに頼むのは後で後悔しそうな気がした。
「もうレッスンの先生は見つけているなんて相変わらず行動力が早いんだから」
流石に色々と無茶を言い過ぎたかと心配そうな祖父を見て多喜は微笑んだ。
「ユニット名も作詞も私にやらせてほしい。実はちょっと良いの思いついたんだ。いつまで?」
「多喜も早いじゃないか」
多幸は優しく笑った。高校三年生、やりたいことが見つからなさそうな孫の久しぶりに見た生き生きとした表情に誘ってよかったと心から思った。
【作者コメント】
さて、やっとメンバーが登場して多喜がプロデューサーになる決意をしてくれました。これで物語が進みます。次回やっとグループ名など決まります。それではまたお会いしましょう。
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