3曲目 自己紹介
「おやおや、みんな揃っていて私がビリかな、申し訳ない」
全員が部屋に来たところを狙ったのか、タイミング良く現れた多幸に少年達は立ち上がって、挨拶をし始めた。そんな彼らのしつかりした挨拶に多幸は目を細めた。
「うんうん、皆、よろしくね。それじゃ、今日がメンバー初顔合わせということで一人ずつ自己紹介をしてもらおうかな。名前と年齢と、志望理由とかその他趣味とか色々聞きたいな。順番はそうだなぁ、安藤君からにしようかな。安藤君以外の皆は座っていようか」
多幸に指名され、茶髪少年は頷いた。
「
大貴はそう言って優しく微笑むと軽く頭を下げて座った。他のメンバーにはなさそうなあどけなさも残りつつも、大人な余裕も醸し出す大貴は確実にお兄さんようなキャラクターだろうと多喜は分析を始めた。
「
可愛らしい少年、由春は可愛らしく首を傾げて微笑んだ。メイクも可愛らしく、自分の可愛いをよくわかっているあざとい彼もまた個性的だった。
「
爽やかな少年、歩は自信満々に微笑んだ。他のメンバーと比べて彼だけもうビジュアルが出来上がっていると思うくらい、所謂センター顔な彼を見て、よく見つけてきたものだと多喜は感心した。多幸の用意したこのグループがなくても、都会に行けばスカウトされそうなくらい歩には華があった。
「こんにちは。
金髪の少年、周音は微笑んだ。大貴とは違う包容力のある笑顔は不思議と安心感があった。同じ年長者の大貴を父とするならば母のようなイメージを持たせる印象だった。また、その金髪姿とギャップのある中身もまた魅力的だった。
「どうも!こんにちは、
元気よく笑った育は確実にムードメーカーの素質があった。歩ほどの華は感じられなくとも、スタイルの良さや人懐っこい性格は磨けば一番輝くのかもしれない。
「あの、
猫背の蓮太郎は弱々しく口を開いた。身長が高い割には自信がなさそうに丸まるその姿はイライラよりも庇護欲を誘うような愛らしさがあり、天性のものだと多喜は二次元のキャラクターを見ているような感覚に陥った。
「
和哉はそう言うとすぐに座った。小柄ながらクールな印象を与える彼だが、自己紹介に多喜は違和感を覚えた。何かを隠しているような気がしたのだ。
「うん、皆、よろしくね。今日から募集したポスターやチラシに書いたようにこのメンバーで全国アイドル部コンテストに出場し、この卵ヶ丘市を盛り上げてもらいたい。勿論、皆にはアイドルとして精一杯サポートしていくのでよろしくね。そして、君達のプロデュースに協力してくれるのが私の孫である、多喜だ。皆、仲良くしてね」
多幸の紹介で一斉に視線を集めた多喜は目を見開いて小さく頭を下げた。
「今日は初顔合わせということで集まってもらったけど、次回以降は早速レッスンを始めるから、皆動きやすい恰好でこの市民会館に集まるように。詳細はまた連絡するけど、2階のレッスン会場を貸切る予定だよ。次回、グループ名とコンセプトも発表するから楽しみにしてね」
多幸が微笑むと全員は静かに頷いた。
「それじゃ、今日はもう解散。多喜、行こうか」
「う、うん。じゃあ、失礼します」
多幸を追いかけるように多喜は荷物をまとめ始めた。部屋を出た後、こっそり中を覗けば、育が積極的に全員とコミュニケーションをとっており、連絡先を交換していた。第一印象が互いにあまりよくなさそうな和哉にさえ育は元気よく声をかけて連絡先を交換しており、自身のスマホを見つめて小さく口角を上げた和哉を見て、多喜はこのグループはいいかもしれないと思った。
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