2曲目 メンバー
卵ヶ丘市民会館の一室で多喜は多幸に言われた通り、大人しく椅子に座ってゲームをして待っていた。コンテストに出場するメンバーに会うということで少々緊張していた多喜だが、ゲームをしていくにつれて、緊張は和らいでいった。
コンコンッ。
「えっ」
順調にキャラクターとの親密度を上げてバトルに挑んでいた多喜は突然のノックに思わずドアの方を見た。
「失礼します」
多喜の持つスマホの画面に表示された失敗の文字と共に入って来たのは白いTシャツに黒のズボンとシンプルな服装と茶髪が印象的な同い年くらいの少年だった。
「あ、あれ?ここってアイドルユニットの場所じゃ?」
先にいた多喜を見て、少年はスマホを確認し始めた。多喜は思わず口を開いた。
「あ、あってますよ。私、岡田多幸の孫で、呼ばれてきたんです」
「そうなんですね、よかったぁ。間違えたかと思いました」
安心したように笑った少年は優しそうな雰囲気を醸し出しながら、多喜とは少し離れた椅子に座って、本を開き始めた。爽やかに自己の世界に入った少年に驚きつつ、このままではすぐに他のメンバーも来るだろうと多喜はゲームをやめて待つことにした。これ以上失敗するとキャラクターの好感度に影響してしまうのだ。
「こんにちは!よろしくお願いします!」
次に勢いよく入って来たのは学校帰りなのか制服を着た少年だった。センター分けの前髪で笑顔が良く映える少年は廊下の方に顔を向けて、誰かを手招きし始めた。
「ほら!俺らの他にもメンバーいたぞ!大丈夫だって、入ろうよ!」
そう少年に言われてきて現れたのは同じ制服を来た少年だった。元気な少年よりも背が高そうだが猫背な少年は弱々しそうに元気な少年と部屋の中を交互に見た。
「あの、その、よろしくお願いします」
「緊張しすぎだって!仲よくしようよ!」
猫背な少年の肩に元気な少年は手を回して笑った。
「ねぇ、邪魔なんだけど」
背後から声をかけられ、元気な少年は驚いたように振り返った。
「あ、ごめん!」
声をかけた少年は二人より身長が低く、小柄な体型だった。少年は黒いヘッドフォンを着け、二人を壁のように睨みつけているようだが、彼の前に立っている二人の身長のせいで多喜にはあまりはっきり見えなかった。
「入り口に立っていると邪魔だよな!中に入ろう!」
元気な少年は猫背な少年の手を引いて椅子に座った。小柄な少年は彼らより少し離れた所に座ってスマホをいじり出した。制服姿だが、他の二人と違う制服なので他校だろう。
「ごめんなさい!遅れました!あれ?」
慌てて入って来た少年は拍子抜けしたように肩からずり落ちたトートバックを肩にかけた。遅刻したと思って来たのか、肩で息をしていた。シンプルなロングTシャツとカーゴパンツを着こなし、金髪に近い派手な髪色をばっちりセットしている少年はどういう状況かと部屋を見渡し始めた。
「あ、俺の隣、空いてますよ!」
元気な少年が自身の隣を指さすと、金髪の少年は安心したように笑い返して座った。あと二人かと多喜は心の中でカウントしながら次のメンバーの登場を待った。
「ここかなぁ」
「そうだと思うよ、失礼します!」
六人目、七人目は一緒に入って来た。可愛らしい少年と爽やかな少年だった。可愛らしい少年は私服姿だが、爽やかな少年はまた別の学校の制服姿だった。二人は空いている席に座ってメンバーを観察するように見つめ始めた。
「そういえば、どうして女の子がここに?男子アイドルユニットって聞いていたんだけど」
元気な少年は多喜の方を向いた。突然声をかけられ、多喜は目を逸らしながら答えた。
「あ、私、岡田多幸の孫で。今日呼ばれたんです」
「そうなんすね!俺、
「あ、どうも」
人懐っこい笑顔で言われ、多喜は小さく頭を下げた。
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