第14話


女性警官はそれほど疑わず、と言うかやや事務的な感じで西園寺刑事さんを呼び出してくれた。



西園寺刑事さんはあの医師と同じぐらいの背格好で年齢も似ている気がした。歳の頃は30半ばってとこかな。



「僕に客って誰かな」とこちらは幾分かさっきの似非っぽい医師とは違って清潔感のあるスーツときっちりセットされた髪形の爽やか系だった。



「あの…藤堂産婦人科の藤堂先生がここを訪ねろって」と加納くんが医師が渡してくれた茶封筒をおずおずと渡すと





「確かに天真の字だ。相変わらずきったないなー」とこぼした。





「てんしん?」



私が聞くと



「あれ?知らなかったの?あいつのフルネーム。藤堂 天真とうどう てんしん



天真―――?変わった名前だなぁ。



「あいつからの依頼ってまともなのないんだよね。ま、それでも話は聞くよ。空いてる会議室押さえるから待ってて」と西園寺刑事さんはあの藤堂医師と違って随分まとも。って言うか親切。あの封筒一枚でよく動く気になってくれたなー、警察って暇?それともこの人がいい人なだけ?それともあの藤堂って医師とよほど仲良し?



会議室はすぐに見つかった。



「あの…藤堂……先生と刑事さんの仲って……」



気になったことを聞いてみると



「ああ、幼馴染なんだよね、小学校のときから。昔からいい加減な奴でさー」



幼馴染……なるほど。



刑事と産婦人科医って変な組み合わせだと思ってたけど幼馴染なら納得。でも幼馴染ならこの刑事さんもてきとーなんじゃ?と若干疑いの目。



使われてない会議室に通された時、少し埃っぽかった。使われてないってどれぐらい使われてないんだろう、って思うぐらい。思わずくしゃみが出そう。カーテンは全部締め切られていて、薄暗い。長細い蛍光灯がいくつかぶらさがっていて、スイッチを入れると一気に部屋が明るくなった。



私たちはもう何度目になるか分からない説明を繰り出した。



けれど西園寺刑事さんは”A”の名前を出した時、あの藤堂医師と同じ反応を見せた。



何―――やっぱりそこに何かあるの?



しかしすぐに西園寺刑事さんは険しい顔つきを仕舞いこみ



「被害届出す?こうゆうのは早い方がいい」と由佳を見ると由佳は怯えた顔でふるふる顔を横に振り私の腕に縋ってきた。



「まぁ無理もないか。レイプ被害者って言うのはなかなか声をあげにくいのが現状でね」



と西園寺刑事さんは妙に真剣な顔を作って見せた。



「だって動画が撮られてるんですよ。それをばらまくって」



「ああ、それは嘘だね。奴らは明らかに風営法違反を犯している。警察だってバカじゃない。それらしい動画や写真が流出したら踏み込まれて商売あがったりだ」



なるほど。



動画は確かにあるかもしれないけれどばら撒くって言うのは嘘?そう言っておけば確かに誰もが警察に通報できない。



「まぁ僕の方でも調査はしてみるけど、生憎だが僕の管轄外でどこまでやれるか……あまり期待はしないでほしくないんだけど」と同情気味に言われた。



分かってる。最初から全てうまくいくことなんてないって。



でもいるかいないか分からない神様、お願いだから私のことなんてどうでもいいから由佳だけはをどうか―――救ってください。



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