第36話

「父さん母さん、戻ったよ」

 シズマが玄関に入りながら言うと、老女がささっと出てきた。ヒロミと目が合った瞬間、凍ったように止まった。ヒロミも微動だにせず、見返した。2人は呆然としている。

「ヒロミ」

 老女が呟いた。ヒロミは、

「母さん」

 2人はまたもや呆然と立ち尽くした。老女はヒロミの母親、ミユキであった。シズマが、

「父さんは中にいるのかい」

 と、沈黙を破ると、ミユキは我に返って皆を居間に通した。

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