第5話


途中で目が覚めた。



後四駅ぐらいで目的地に着く、と言うところだ。



今日も乗り過ごさなくて良かった、と思いながらバスのシートを確認すると私の他に一人だけ乗客がいた。



最前列、遠くであまり見れないけれどきれいに夜会巻きにした髪に……喪服?



その女の人は黒い着物を纏っていて、同じく夜行バスに揺られていた。



でも眠っていはいないようで、まっすぐに前を向いている。



姿勢もいい。



こんな時間にお葬式……もしくはお通夜でもあったのだろうか。



何気なくそう思った。



そうぼんやり考えていると、またも睡魔が襲ってきた。



残り四駅。気を付けなきゃ眠ってしまって乗り過ごしてしまう。



でも急激な眠気には耐えられなかった。



『次は〇〇停留所~〇〇停留所~、ご降車のお客様はボタンを押して…』



と言う言葉でハっとなった。



慌てて白い台座の赤いボタンを連打する。



『〇〇停留所、停車致します』と運転手さんのアナウンスにほっとした。



何となく……キョロキョロと車内を見渡すと、やっぱり私一人だった。



でも……



あれ?



あの喪服の女性が居ない。



確か最前列に座ってた筈。



途中の停留所で下車したのかな。



最初はそんな風に思っていた。



そんなことを思っているうちにあっという間に下車するバス停にバスがゆっくりと停車した。



幾らか酔っている私は危うい足取りながらも何とか立ち上がろうとして……流石に10㎝ピンヒールは危険だ…



足元を慎重に確認しながらも席を立ち上がろうとして、隣の席に乗車券が落ちているのを見つけた。



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