第3話

深夜の夜行バスが停まるであろうバスターミナルに向かおうとしている私に



「あのサ、前川」と塩原が私の手を取った。



「何?」私が目を上げると塩原はちょっとたじろいだように視線をきょときょとさせて






「あのサ……今日は遅いから、うち泊まっていけば…?」






は?



何言ってんの?



「あんた何言ってンのか理解してる~?相当酔っぱらってるな!」



バシっ!



私は塩原の背中を力強く叩いた。



塩原の手はすぐ離れていった。



「そうだよな~!珍しく酔っぱらったかも俺」塩原は頭を掻いて苦笑い。



ホントに…?



ほんとに酔っぱらってるの?



だって私の正常な記憶じゃ、塩原は結構…?いや、かなりザルで、この日は生(中ジョッキ)三杯と日本酒一合程度だった。



あ、ちょっと記憶戻ってきたかも…



塩原がそれ程度で酔う筈がない、と今になって思う。



つまりは……



私は誘われてたってワケ??



ああ、惜しい。三十を目前にして彼氏もいないし、顔も性格も稼ぎもそこそこな塩原とだったら…



なんて、そんなこと思ったら塩原に失礼だよね。手近な所で手を打つ、とか。



てか塩原もそうなんじゃないの?手近な所で手を打つって。たまたま私に彼氏がいなくてたまたま近くにいた女が私で。



ああ、分からない。



と、まぁ私と塩原の出来事はおいといてー、





この日私はそれ以上の出来事と遭遇する。



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