十五
「礼子、礼子!」
ぐらんぐらん、と揺さぶられる感覚が鮮明になっていく。
目を開けると、お母さまの顔が視界いっぱいに広がる。
「どうしたのよ。布団も敷かないでこんなところで寝て、しかも、あなた、うなされていたのよ。大丈夫なの?」
ああ、夢、か。私は死んでなどいなかった。左胸の痛みもすっかり取れていた。右手を上げ、開いてみる。確かに、あの時、私の右手は赤黒く染まっていた。しかし、何も付いていない青白い右手だった。
「もう、朝っぱらから驚かせないで」
お母さまの問いを無視したのが気に障ったのか、お母さまは、呆れた表情を浮かべ、早々と部屋を出ていってしまった。
正夢だったら、良かった。彼に殺されるなんて、本望だ。私は、彼に殺されて良かった。
でも、すべて夢で、私はこうして生きている。
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