三
それから一週間が経ったくらいのこと。日常は突然変わる。
突然お父さまから、お父さまの書斎へ呼び出された。
「お前に縁談の話が来ている」
何事かと思ったら、真剣な顔つきでそう言われた。
目の前に差し出されたのは、ある男性の写真だった。樽のような体つきで、細い目でこちらを見ている。
「橋本君だ。この前の授業参観でお前を見たらしい」
前に女学校の先輩が、授業参観に訪れていた殿方とご結婚なさったことを思い出した。授業参観で見初められるのは、珍しいことではない。
結婚してしまえば女学校を退学しなければいけないので、私の取り柄となった勉強を捨てることになる。でも、結婚をすぐ決めれば、お母さまの願いを叶えることができる。
またお母さまの「いい子ね」と言ったあの微笑みをもう一度見たい。
「この方に決めます」
そう言うと、お父さまは驚いた顔をしていた。
「そんなに焦らなくてもよかろう」
お父さまは、椅子に深く座り直した。
「今週、橋本君が近くに来るそうだ。その時に会えば良い」
そして、明後日その方と会うことになった。
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