二
お母さまは、朝食のおすましを一口飲むと、微笑んで言った。
「礼子も、早く結婚して欲しいんだけれどね」
最近のお母さまの口癖だった。
「早くこの家を出て行きなさいよ。邪魔なのよ」
お母さまの隣に座る姉が口を尖らせて言った。姉は性格が悪い。口は悪いし、人使いが荒い。昔から姉とは肌が合わない。
「試験で満点だか知らないけれど、女に勉強なんて必要ないのよ。本当の教養ってものがあって…」
「彩子」
お母さまは静かに姉の名前を呼ぶだけで、叱りはしなかった。
「私は邪魔なんかじゃない。ねえ、お母さま」
そう言うと、またお母さまはおすましを一口飲み、「朝っぱらから喧嘩しないの」と言った。
私は冷たくなった卵焼きをぱくりと食べた。
私が本当に結婚したら、この家を出て行かなければならない。私の父は医院を開業しており、その後を姉の夫が継ぐことになっている。私たち姉妹で、女しかいないから婿を取るしかなかったのだ。だから、姉は家を出ず、この家で子育てをしている。
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