第36話
それ以外は死ぬほど大変な事だけだった。
浴びるほど酒を飲み
笑いたくなくてもいつも笑顔でいて
嫌な事を嫌だという事もしない。
欲望に満ちた瞳で見られ続ける。
本当にたった数人以外の何千のお客さんは私をあわよくば抱けないか自分の愛人にできないか、それだけを目的に通い詰めるのをこの目で見ていた。
それを優しく断り、ずっと太い客にする私も私。
きっと同じだけ汚い。
「雅人さん、私は今幸せだから心配しないで」
「…複雑だな。
幸せなのはいい事だけど、ミサキが知らない顔をするのは」
「あの頃なんて毎日死にもの狂いだった。
でもそれでも、毎日通ってくれる雅人さんたちには感謝してもしきれないよ」
「ミサキ、これからは会ったりしてくれるかい?」
「本当は会いたくなかった。
でも会ってしまったのはしょうがないの。
連絡先変わってないよね?連絡する。
でも今日は予定があるのでこれで帰るね」
「9階に何の用だ?知り合いって誰?」
「ダメ、それを聞いたらもう連絡しないわ」
そう笑いかけると雅人さんは口を噤む。
「じゃあ、またね雅人さん」
そう言って私のカバンをとり、部屋を出る。
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