第35話
そして805号室に入る。
雅人さんは何故か引出しを荒らし始めて。
「あったあった。
これ、スペアキーいつでもおいで」
そう言ってスペアキーを私に渡す。
「私なんかにいいの?」
「君に渡す以外に使い道がないよ」
優しげに笑う雅人さんは前のままだった。
「会いたかったよ、君が引退してからずっと会いたくてたまらなかった。
それでもミサキが探さないでくれと頼んだから…」
「ありがとう」
「それでも、俺には引退する事を教えてくれていたからマシか。
ミサキが消える事を知っていたのは俺を含めて本当に少なかったからな」
「そうだね、雅人さんたちは私が最初の頃の時からお世話になっている特別な人たちだったからね」
「ミサキの歳も知っている人も少なかったけど、俺もまさかこんな普通に制服を着られているとは思わなかったよ、本当に高校生なんだな」
「そうだね、でも化粧も髪も全然違うのによく気づいたね」
「俺は本当に毎日通ったからね、ミサキは俺にとって特別だったからね」
そう寂しげに笑う雅人さん。
雅人さんと出会ったのは私がお店に入りたての頃からだった。
私にとってもあの店で働いてよかったと思える数少ない事だったよ。
"彼"や社長とママと出会えた事。
雅人さんを含めて何人かのお客さんに出会えた事だけは、働いてよかったと思う事だよ。
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