第10話 予想外の事態

 澪はゴブリンを一体倒し、残りの2体のゴブリンを倒しに、ゴブリンが向かった茂みの方に進んでいく。

 澪は森の中を進んでいくときは、いつどんな敵に遭遇するかわからないのでいつも茂みに隠れながらの移動を意識して行っている。

 流動体のスライムの体は極力音を立てないように移動するには最適な体だった、澪がゴブリンを追いかけて進んでいくと、すぐに2体のゴブリンたちを見つけることができた、ゴブリンたちは澪が投げた石の音を頼りに元いた場所から数m程離れた地点にいた、様子を見てみるがどうやら澪が倒したゴブリンには気づいていないようだ。


 『よし、あのゴブリンたち、仲間がやられた事に気づいてないみたい、2体ならなんとか奇襲すれば同時に倒せるかな? 触手を2本生やしてそれぞれの顔と喉に順番に酸をかければいけるかな?』


 澪は、初めて魔物であるゴブリンを一体倒したことで自信がなかったのだが、自信がついたのか2体まとめて戦おうと考えた、だが触手で酸をかけようにも澪が自在に操れる触手はまだ人間だった頃の名残りか2本しか操ることができない、そこで澪はまず、それぞれのゴブリンの顔に酸をかけて痛がって両手で顔を覆っているときに喉に向けて2発目の酸をかける事にした、だがこの作戦は全てうまくいったらの話だ、作戦というのは常に失敗することも考えて第2、第3の作戦も考えなければいけない。

 澪は自分の中ではゴブリンが初めての魔物だと思っているので、初めて魔物を簡単に倒せてしまったので、今回も同じような作戦で上手くいくと思ってしまったのだ。


 『よし、ゴブリンたちが徐々に警戒を緩めて油断している今が好奇、いきなり飛び出して驚いているゴブリンの顔にまずは酸をかけてやる!』


 澪は油断しているゴブリンたちに意識を集中してタイミングを測っていた、そしてすぐにチャンスはやって来た。

 ゴブリンたちは自分たちに攻撃してきた敵を見つけられなかったのか、苛立っていたのだがその苛立ちもすぐになくなり、警戒心を解いてまた2体でふざけ出したのである。

 澪はその様子を見てすぐにチャンスだと思い、隠れていた茂みから勢いよく出てゴブリンたちを脅かした。

 澪の作戦通り、突然茂みから勢いよく茂みから出てきたスライムに驚くゴブリンたち、その様子を見ながら間髪入れず澪はゴブリンたちの顔に目掛けて酸を触手から噴射してかけた。

 ここまでは澪の作戦通りに上手くいったのだが、ここからが予想外の事態になってしまった、澪がゴブリンの顔に酸をかけ、予想通り両手で顔を覆い呻いているゴブリンたち、このまま喉にも酸をかけようと触手の先をゴブリンたちの喉に向けて酸を噴射しようとした時、顔に酸をかけられ呻いているゴブリンの一体が澪に向けて石を投げて来たのだ。

 顔にかけた酸のかかりが甘かったのか、確かに澪がいる場所に石を投げて来たのだ、突然の行動に驚き動けなかった澪は、ゴブリンの投げた石にぶつかり後ろに飛ばされてしまうその隙に石を投げたゴブリンは仲間のゴブリンを置いてどこかえと逃げて行ってしまった。

 石にぶつかった澪は多少HPが減ったがそれもHP自動回復のスキルですぐに回復する、それよりも澪は急いで残ったゴブリンに新たに酸を今度は念入りにかけてトドメを刺した、だが澪は逃げたゴブリンのことが気になっていた、もし残ったゴブリンにトドメを刺すのではなく逃げたゴブリンを追っていたとしても、澪の今の移動方法では追いつけず結局逃げられていただろう、それだけでなく残っていた方のゴブリンも逃げていたかもしれない。

 結局は澪の満身と油断が招いた出来事なのだ、あの時、澪が油断せずに他の作戦や酸を防がれた時の対応策を考えていればこうはならなかっただろう。


 『……油断した、わたしがもっと慎重に作戦を考えて、不測の事態が起きた時の対処法も考えていればこんな事にならなかったのに、……いや、もう起きちゃった事だし今更後悔しても遅いか、今回の反省は次に活かそう! よし! いつまでも落ち込んでても意味ないし今はこれからの行動についてだよね』


 そう、ゴブリンが逃げたということはおそらく集落に逃げたのだろう、もし集落に逃げたゴブリンが仲間のゴブリンたちに澪のことを伝えればゴブリン全員で澪に報復に来るかもしれない、だから澪は選ばなければいけないのだ、ゴブリンたちから逃げるためにこのどこまで続いてるのかわからない森を出るために彷徨うのか、もしくはゴブリンたちに見つからないように拠点にしたあの木の下の穴に隠れるのかを。


 『この森から逃げるか、もしくは穴の中に隠れてゴブリンたちが諦めるまでやり過ごすか、う〜ん、他にも方法はあるかもしれないけど、今はこのどっちかがいい気がする直感で! これってわたしのステータスの運がそういってるのかな?』


 結局、澪は森から逃げるのではなく、拠点の木の下の穴に隠れてやり過ごす事にしたのだ。

 理由はなんとなく直感でという事らしい、澪は当分の間穴に隠れてゴブリンたちから隠れることにした、だが澪もタダでは済まない、ただ穴に隠れるのではなく近くにゴブリンが来たら少しずつ狩っていきゴブリンの数を減らそうと考えたのだ、レベル上げもできゴブリンの数も減らせる、まさに一石二鳥の作戦だ、また調子に乗ってる気もしなくもないが。

 

 

 

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