第8話 レベル上げと新たな敵!
湖の水がせせらぐ音が聞こえ木々が風で揺れる音がする、湖には水を飲みに来た大きな生き物たちが複数いて争うことも無くみんな大人しくしている。
ここは澪が拠点にしていた岩場から移動して半日の距離にある、森の生き物たちの水飲み場らしき湖がある場所だ、澪は進化してから新たな獲物を求めて拠点の岩場をかなり離れたこの湖まで来ていたのだ。
だが、澪はこの湖に来たことを後悔していた、なぜなら進化してベビースライムとなり攻撃スキルを少し覚えたとはいえこの湖にいる生き物たちはみんな大きく強そうだったからだ、澪が覚えた攻撃スキルとは酸だ、その名の通り相手に酸をかけるだけのスキルであるこのスキルもスキルレベルが上がれば、なんでも溶かす酸になり強くなるんだろうが、今は進化したばかりでとてもそこまでできるとは思えない、何より川に来ている生き物たちは大きな角を持つ鹿だったり、群れで行動するオオカミや、地球で見たことがある熊よりも2倍の体格がある赤い体で傷だらけの熊や、水牛のような鋭くデカい角を持つ群れなどが争いもせずにみんな仲良く水を飲んでいるのだ、澪はこの湖に違和感を感じたが湖の周りには生き物がたくさんいるため、調べようも無かった、もし湖に近づき他の生き物に気づかれて襲われたら澪はひとたまりも無い。
結局澪は湖には近づかず湖に来ようとする小型の生き物を狩ってレベル上げをすることにした。
『あの湖はかなりの大きさがあったから、多分この周辺の生き物は全部あの湖に水を飲みにくるはず、ならわたしは湖の周辺に隠れていて小さい生き物が来たら奇襲を仕掛けて倒せばいい、そうすれば前みたいに賭けに出る必要は無くなるしね、これぞローリスクハイリターン! わたしってあったまいい!』
澪は自分で考えた作戦を自分で褒めて自画自賛しながら隠れ場所を探し始めた。
そして隠れ場所を探し始めて数十分後、澪は隠れるのに適した場所を見つけた、そこは木の根と地面の間に運良く出来ていた穴だった、今の澪の大きさは空気の抜けたバレーボールくらいの大きさがある、そして木の根にある穴はちょうど澪が入れるくらいのサイズの穴だった、まあ、仮にもっと小さい穴でも澪はスライムなので体の形を変えながら入るくらいは余裕なのだが。
『やった! ちょうどいい穴発見! 当分ここを拠点にして湖周辺でレベル上げをしよう、どれどれ、穴の中はどうなってるのかな?』
澪は穴の中に入って中の広さや他に生き物がいないかを確認した。
『うん! 中に生き物が住んでた後はないし広さも十分あるから住みやすそうだし隠れやすそう』
澪は穴の確認をして快適そうだと思い本格的に拠点にすることに決めた。
『それじゃあ、拠点も決まったし、さっそく今の私に倒せる奴がいないか調べないとね』
澪は新しく覚えた、スキル気配察知を使い周囲の地形と生物の気配を探り、スキル危険察知を使って今の澪の実力で危険な生物がいないかを調べた。
今までは気配察知がなくても澪が弱すぎたために、周囲にいた生物はほとんどが澪より強かったので、危険察知で自分にとって危険かをなんとなく判断できればそれで良かった、だが今は危険察知で危険度を察知するだけでなく、気配察知を使うことで危険な生物以外の気配も感じ取れるようになったのだ。
気配察知のおかげで危険のない生物や植物などの気配もわかるようになった。
この2つのスキルのおかげで澪は実質、目が無くても周囲の状況などを把握できるようになったと言えるだろう。
『ん? こっちの方から今まで感じたことがない気配がする、危険察知がそこまで反応してないってことはそんなに強くないのかな?』
澪は気配のする方へ向かって確かめに行こうとしたが、その前にやらなければいけないことを思い出した。
『おっと、忘れてた、探しにいく前に拠点の木に目印をつけておかないとね、このまま行ってたら帰ってくる時にどの木かわからなくなるところだったよ』
澪は拠点に決めた木に体の一部を触手のように伸ばして触手の先に酸を出してバツ印を溶かしながら少しずつ書いていく。
『よし! これで他の木と見分けることができるようになった! それじゃあ、改めて出発しよう』
澪は先ほど感じた気配のする方へと向かって進んでいくことにした。
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拠点から離れて森の中を進んで行くこと10分、ようやく澪が感じとった気配に近づいていた、そこは森の中でありながら森の木が切り開かれて広い平地になっていた。
澪は気配察知と危険察知を平原の方に集中して使うとやはり最初に感じた気配の正体はここにあった。
その正体は緑色の小鬼だった、その姿は漫画やアニメなどによく登場するゴブリンにそっくりだった、その気配の数は約100体にもなる、澪が感じた気配とはこのゴブリンの気配だったのだ、ゴブリンは一体なら対して強くないので簡単に倒せるのだが群れとなるとその難易度が増していく。
ゴブリンは一体から五十体の群れなら数が多いだけでそこまで強くはない、だが五十体を超えると何故かゴブリンは拠点となる集落を作り出し、その群れの中からゴブリンの上位個体や王が生まれるのだ、ゴブリンの上位個体からは普通よりも強くなり倒すのが難しい、今の澪がゴブリンの上位個体に見つかれば踏まれただけで死んでしまうだろう。
『気配察知のおかげで気配のするやつの形なんかはわかるようになったけど、やっぱりまだ慣れないなぁ』
そう、澪は危険察知を使っていた時は敵意があるものや澪に危険が及ぶものにはその危険度やどんな危険があるかによって色がわかるのだ、そして今回覚えた気配察知は気配のするものの形を捉えることができる。
つまり澪がアースワームと出会った時は危険察知の力で長細くて茶色いモヤとして感じとっていた、さらに芋虫の時は毒を持っていたので半月の形の紫色のモヤが見えていた、このように相手がどんな特性を持っているかによってモヤが色と形を作っていたのだ。
そして、今回新たに覚えた気配察知は今まで曖昧だったモヤが輪郭をもち鮮明になった、生物や植物にちゃんとした形の輪郭が見えるようになったのだ、これによっていま澪はゴブリンを2つのスキルを使って感じることで小柄で緑色の、昔アニメなどで見たことのあるゴブリンだと気づいた。
これが澪がこの異世界に来て初めて見つけた、魔物らしい魔物だった。
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