第4話

都内の高級ホテルの一室。



窓から見えるのは小さくある東京のビル、ビル、ビル。



ここからの眺めはまるで箱庭のようだ。



手を伸ばせばすぐに届きそうな、手の中にすっぽりと入ってしまいそうな光景。






何でこのホテルにしたのかは、よく覚えていない。



どうせ女が「一度泊ってみたい」なんて言ったのだろう。






俺はくわえタバコをしたままシャツに腕を通した。ここがイマドキ珍しく喫煙室だったのはラッキーだ。



「啓人って良い香りがする。この香りあたし好き~」



同感だ。



俺もこれを気に入っている。





バスローブだけを羽織った女が後ろから抱きついてきた。



ってか俺って自分の名前名乗ったっけ?



「何の香水?」






「ファーレンハイト」




俺は振り返った。

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