第5話

「ファーレンハイトォ?ふぅん、何かかっこいい名前。意味ってあるの?」



どうせ気になるのはネーミングだけだろ。意味なんて知ってどうする?



俺は曖昧に笑ってタバコを吹かせた。






意味は





華氏




女がじっと俺の顔を見上げる。



少し媚びたような甘い表情。



単純な女は好きだよ。扱いやすいから。





でも本気になるな。



俺はいつだって遊びだ。





「啓人の目って左右で色が違うんだね」



俺はちょっと目を見開いて、わずかにまばたきをした。



昨日は照明を落とした室内が暗くて気付かれないと思ったが。





そう、確かに俺の右眼は黒色で、左眼はブルーがかった淡いグレーをしている。




劣勢遺伝



俺は日本人の父親の目を右眼に、アメリカ人とのハーフだった母親の目を左眼に



それぞれ血を受け継いだみたいだ。




小さい頃はこれを理由によく苛められもしたが、今は逆に「きれい」や「変わってる」という理由で女からモテる要素に成り代わっていた。




オッドアイ




なんて言うと聞こえはいいが、虹彩異色症という名の歴記とした病だ。



病とは言うが、単に色が違うだけ。



見え方も、何も変わらない。





偶然の産物に感謝だぜ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る