第3話

「啓人~」



聞きなれない女の声に揺り起こされた。



「なんだよ?」



俺は寝起きの不機嫌顔で見慣れない女を睨み上げた。



「なんだよって、もう6時だよ?5時半に起こせって言ったのに、全然起きないんだもん」



女は頬を膨らませてぷりぷり怒る。



俺そんなこと言ったっけ?



大体にして俺は人前で眠りはしない。よっぽど疲れてたんだな。



俺はベッドから見える窓にちらりと視線を向けた。



分厚い遮光カーテンの隙間からほんの少し朝日が洩れてる。



「……6時…ヤベっ」



俺は高級な羽毛布団を跳ね除けた。



「ちょっと!」



女が慌てて布団を手繰り寄せ、胸にかき抱く。



女のむき出しの真っ白な肩が目に入り、昨日の情事をふと思い出す。






いい女だった。



イコール体とセックスの相性が、ってことだ。



だけど







あばよ。もうお前とはこれきりだ。



大体俺はお前の名前すら知らねぇ。





そんなことを思いながら、俺は脱ぎ散らかしたシャツとスーツを手繰り寄せた。

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