第六話◇どうしてなりたいんだっけ?

「またなの?」


 そう、また落ちてしまった。その事実に、ううぅ、と思わず唸り声を上げる。悔しい。早くVtuberになりたいというのに。なぜ受からないんだろう?


「諦めようかしら___。」


 そう思ってしまう。何回か送っているが、受かっていない。

 もう、受からない運命なのだろうか。どんよりする。


 はぁ、とため息をつく。そもそも、どうしてVtuberになりたいんだけ___________?

 わからなくなってきた____。


(もう数回だけ、送ってみようかな。)


 頑張らないと。自分を立ち上がらせて、うーんと対策方法を考える。


 というか、どうやったらメンバーは受かったのだろうか?

 疑問を抱き、スマホでYouTubeを開いて調べてみる。


『茉莉花がオーデションを徹底攻略法を教えます!!』


「あ、これいいわね。」


 ポチッと再生ボタンを押す。


「こんまりー、んじゃ、やっていくね、まず、書類選考。

 誰もがつまずくところだよね、とりあえず、当たり障りのないことはブッブー。

 事務所側が、採用したいな、って思えるような内容を書くの。

 具体的に書いた方がいいね。

 それと、一っ番大切なのは、「情熱」だよ。

 諦めずに、ずっと送り続ければ必ず受かるから。」


「情、熱______。」


「情熱」。


(情熱、か。いいこと言うなあ、茉莉花ちゃんって。そう、だよね、諦めるのはダメだ。でも、どうしてVtuberになりたいかわからない____。何を、目指せば_____?

 はぁ、やっぱりダメだ、実況動画でもみようっと。)


 ***


「あははっ、面白いわね〜!」


 先ほどとはうって変わり、満面の笑みが広がるエレナ。


(あー。元気なくしてたけど、元気もらった。ありがと、茉莉花!)


 そう、心の中でお礼を告げる。

 ___と、あることに気づいた。


(私も____、私でも元気をあげられるのかしら?)


 と。Vtuberの意味を思いつく。さっきまでは、辛かった。本当に受かるのだろうかと。情熱が大切だと言われ、頑張ろうと持ち直したが、Vtuberの意味を忘れ、わからなくなった。そんな時、元気をもらった。茉莉花に。なら、自分も元気をあげれるのではないか_______?


「そう、元気を上げるの、ファンに!私と同じように、光を見失ってる人を、元気ずけて、救う!!」


 完全に、復活した。


 私は、元気をもらったように、今度は元気をあげたい。

 だから、Vtuberになりたいと。


(私がこんなとこでしょげてちゃ、元気をあげれない。頑張らなとね______っ!!!)


 パチンと頬を叩き、気合を入れる。


 そうだ、初めは楽しそうだからVtuberになりたいと思っていた。

 しかし、今はそれに加えて、元気を届けるという目標がある。

 光を見失ってる人に、元気を与えて光を手にしてほしい____。


 それが、エレナの生きる意味、Vtuberになる意味。


(よし、この情熱を____、元気をもらうと言うことを、伝えよう、書こう。

 大切なのは、情熱。大丈夫、前に進もう。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る