偽婚約者の忠告
「謝らないでください。大切な人の事を酷く言われたら、誰だって怒ります」
「…」
私の言葉に、驚いたような表情をした高森。
最初からその約束なのに、ビックリしないでよ。
しかも高森だけじゃなく、一馬さんも、後から入ってきた2人も同じ表情だった。
彼等にしてみれば仮にも婚約している人間だから、そんなことは言わないと思ってた?
怒るとでも?
まさか。でも、言わせて貰うなら――
「まず言わなくてはならないのは…。一馬さん、私の前でその女性の話をするという事は、失礼に当たると思いませんか?」
「え?」
「きっとその女性の事を語って、高森家と水川家との婚約を壊したかったからだとは思いますが」
「…」
ほーら。やっぱり。
無言になるってことはそういう事なんじゃん。
「水川運送が今後一切、一馬さんのお家でやられているアパレル事業から手を引くことになってもいいという覚悟で、お話になったんですよね?」
「あっ、いや…」
「高森家に水川家は相応しくない。匡高さんには私よりその女性の方が合っている。つまりは私の事を、ひいてはこの縁談を了承した父の事を侮辱したという事になると思いませんでしたか?」
「違います! あ、いやそういう意味じゃなくて! 違うんです!」
「まさか、そこまで考えが及ばず発言してしまった、という事でしょうか?」
「…っ」
脅しておいて私が言うのもなんだけど、ぐうの音も出ない、ってこの事か。
自分の発言には責任くらい持ちなさいよ、全く。
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