至近距離

「俺も君の奥さんになる人と話してみたかったんだよ。ずっと母親たちと話してばかりだもんな」


「女性は女性で交流もしなくちゃならないからな」



 扉のところに寄りかかるその人は、「ふ~ん」と、高森の言葉を適当に聞き流しているように見える。



「匡高たちは何かしら策士的な考えでやってるんだろうけど、まぁいいや。俺は見栄を張り合うあの人達との会話は飽きてるし」


「見栄だなんて、人聞きの悪い事を」



 経営の猛者たちとは違う話し方をしている高森は、繋いでいる私の手をグッと引き寄せ、強制的に腕を組ませる。

 至近距離になった事で、自分の体を盾にしてくれているようだった。

 それを気にも止めないという感じで「初めまして」と、間を詰めて私に近付いてくる男性。

 このグループの後継者は、みんなこんな感じ?

 高森も初めて会ったときに交渉してきたように、この人も人との距離というか、温度差を気にしない行動をする感じだな。

「驚かせるような行動はやめろ」と高森が行動を制するけど、それでも諦めないようで。

 払い除けようとする高森の手を掻い潜り、グイグイと遠慮なしに顔を近づける。

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