なんて。

 そんな事を私が心配しても意味がない。

 高森はこれを毎年繰り返してるし、この集まりには慣れっこなんだろう。

 私と同じように、その “ 表 ” の顔を周りに向けたままなんだから。



「沙彩さん、ごめんなさいね」


「え?」



 周りに人気がなくなって、お義母様と2人だけになった時。

 そっと小さな声で囁かれた。

 一瞬聞き間違いかと思ったけど、どうやら私は高森の母親から謝られているようだ。



「お義母様? なぜ謝罪を?」


「あの人達、嫌な目で見て来るでしょう? TAKAMORIの経営陣の集まりは毎回こんな感じなのよ。嫌な気持ちにさせちゃったらごめんなさい?」



 うわ…。

 私を気遣ってくれてる?

 お姑さんてどんな風に接していいものなのか不安だったけど、こんなに優しいなら気負わなくて済むかも…

 そんな事を思っていた矢先。



「一族の経営者達は競い合ってるから。特にこの場で後継者が結婚相手を紹介するとなるとひがみが凄いの。他の後継者は独身が多いからかしらね」



 と、私だけに聞こえるように少しだけ勝ち誇ったようなセリフを吐いた。

 その意図も感じられるような笑みを浮かべている。

 若干それが怖くもあり、“ あなたも競ってるのか ” と突っ込みたくもあり。

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