戦場

 高森の家は総合商社。

“ TAKAMORI ” と言えばかなり有名な企業だ。

 「TAKAMORIに入れば将来は安泰だ」、とも言われている。


 水川の家は運送業界。知名度はそこそこだと思う。

 でも、高森家と水川家では天と地の差。

 そんな差があるのに、なぜ私が高森と見合いをすることになったのか不思議で仕方ない。

 高森の相手にはもっと相応ふさわしい女性がいたはずだ。

 なのに、本命がいて、一人娘で、6つ下の私と偽装でも結婚なんて。

 父の会社を吸収したいのが目的?――とか、思ったけど。

 両家の家長同士がどんな取り決めをしても、私が意見したところでどうにもならないことくらい、出来の悪い私の頭でも理解している。

 考えるだけ無駄、だと。


 会場に一歩足を踏み入れれば、高森一族の経営陣の方々の視線が痛いくらい突き刺さってくる。

 お義母様かあさまと話していても、その視線は集中していて、見なくてもヒシヒシと伝わる。

 経営陣の奥様方も、お義母様を介して会話をしながら私を値踏みしているようだ。

 ここに来る途中で高森から渡された婚約指輪にも、と言った方が早いか。

 私をチラッと見ては、指先に視線が動いてるのがあからさますぎる。

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