同じ境遇

「大丈夫ですよ。あなたは私の母に付いて、主に母との会話を心掛けてください。後で頃合いを見計らって助けに行きますから」


「はぁ…。助け、ですか」



 助けが必要な集まりなんですか?

 なんか、行きたくないかも…。

 そんなことを聞かされ、この服で良かったのかと、義理の両親に合わせて選んだ淡いクリーム色のワンピースの裾を思わず握り締める。



「今日は先日のパーティーには出席していない、グループの経営陣へのお披露目なんです」


「お披露目なのに違うって、この間と何が違うんですか?」



 あの集まりもかなり濃かったのに?



所謂いわゆる、“ 後継者の自慢 ” 、ですよ」


「自慢?」


「はい。本当は出来れば僕も参加したくないんですけどね…。婚約となるとこればかりは逃げられません」



 珍しく、あのハスキーボイスが弱い口調になっている。



「そう、なんですか?」



「大変ですね」と続ければ、高森は小さく笑った。



「水川さんも経験がおありでしょう? 社長を父親に持つとどんな風に周りに見られるか」


「あ、それ凄く分かります」


「ハハッ」



 即答すれば、今度は大きな声で笑った高森。

 そんな風に笑う時も良い声なんだな…。

 高森の話に対しては激しく同意だ。

 親に向ける同じような目で、品定めのように見て来る。

 仕草や会話の中で荒探しのように。

 そんな視線で何度息が詰まった事か。

 私の場合は一人娘だったので、成人に近くなればなるほど、結婚相手にどうか見定めていたに違いない。

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