覚悟

 親に反抗して家を出たのに、結局は親の言いなり。

 自分の人生と選択にガッカリしながら改札を抜けると、思いもよらぬ事が待っていた。



「りゅ…じ…」


「…」



 隆至が、改札口にある柱に寄りかかって立っていた。

 私を待っていたんだろう。

 会えたことは嬉しいけど、でも…嬉しくない。

 だって隆至の表情は、散々見慣れてきた別れを切り出す顔付きに見えたから。



「話、できる?」


「…うん」



 言葉少なに会話をすると、隆至の後を追うように歩き始める。

 いつもだったら、隣に並んでちゃんと手を繋いでいたのに…。

 行き付けのカフェに寄るのかと思ったけど、店の横を通り過ぎて歩き続ける。

 着いた場所は、隆至の家。

 もう来られないと思っていた場所に着いたから、とても驚いた。



「…」



 黙々と飲み物の準備をしている彼の横顔は、改札で立っていた顔付きのままで。

 この部屋で改まって別れを切り出されたらキツイな…と、多少は覚悟をしておかなければと拳を作って力を籠める。



「はい」


「あり、がと…」



 私用にと買っておいたカップには、私の好みのミルクたっぷりの甘めのコーヒーが注がれていた。



「俺、考えたよ」


「え…」


「凄く考えた」


「うん…」


「考えたけど、未だに嘘の結婚なんて納得できない」


「…ん」



 あぁ…。

 やっぱり、か…。

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