覚悟
親に反抗して家を出たのに、結局は親の言いなり。
自分の人生と選択にガッカリしながら改札を抜けると、思いもよらぬ事が待っていた。
「りゅ…じ…」
「…」
隆至が、改札口にある柱に寄りかかって立っていた。
私を待っていたんだろう。
会えたことは嬉しいけど、でも…嬉しくない。
だって隆至の表情は、散々見慣れてきた別れを切り出す顔付きに見えたから。
「話、できる?」
「…うん」
言葉少なに会話をすると、隆至の後を追うように歩き始める。
いつもだったら、隣に並んでちゃんと手を繋いでいたのに…。
行き付けのカフェに寄るのかと思ったけど、店の横を通り過ぎて歩き続ける。
着いた場所は、隆至の家。
もう来られないと思っていた場所に着いたから、とても驚いた。
「…」
黙々と飲み物の準備をしている彼の横顔は、改札で立っていた顔付きのままで。
この部屋で改まって別れを切り出されたらキツイな…と、多少は覚悟をしておかなければと拳を作って力を籠める。
「はい」
「あり、がと…」
私用にと買っておいたカップには、私の好みのミルクたっぷりの甘めのコーヒーが注がれていた。
「俺、考えたよ」
「え…」
「凄く考えた」
「うん…」
「考えたけど、未だに嘘の結婚なんて納得できない」
「…ん」
あぁ…。
やっぱり、か…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます