抗えない立場

「私、親が “ この人と結婚しろ ” って言われたらするしかないの…。一人っ子だし、そうやって育てられた。でも、隆至とは別れたくない」


「…」


「だから…見合い相手に彼と別れる気はないって言ったら、向こうも恋人と別れるつもりはないって…」


「は…? 彼女がいるのに相手も結婚する事を了承したの?」


「その彼女とは結婚できないけど別れたくないから、お互い不貞行為で訴えずに表向きは夫婦でいましょうって。部屋も隣だから恋人が来ても干渉しないようにって」


「え?」


「結婚しても、今まで通り付き合っても構わないって言われたから、だから…!」


「…」



「金持ちって考えてることが分からない」と、俯いて頭を掻きむしる隆至。

 そのあとすぐ「考えさせて」と、部屋を出て行った。



「…っ」



 また、ダメかも…。

 私には普通の恋愛をすることが許されないんだと、改めて思い知らされた。

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