現実

 ――――――――――………………



沙彩さあや?」


「え?」


「どうした? ボーっとしてたよ?」


「あ~…。フフッ 私達が出会った時の事思い出してた」


「もしかして俺の武勇伝?」


「そう。武勇伝」



 コーヒーをご馳走したあと何日かしてから、いつも通り隆至りゅうじにホームで呼び止められた。

 そしてその日はいつものカフェで「好きです。お付き合い、してくれませんか?」と告白されて。

 嬉しくて、返事は即答だった。

 私の実家の事は敢えて言わなかったけど、付き合ってもうすぐで1年という時。

 父の秘書が突然家に訪ねてきて。



「社長からお預かりしてきました。お見合いは1週間後との事です。当日の10時にお迎えに上がります」



 突然の見合い写真だった。

 ちょうど隆至もいた時だから、秘書が帰ったあと「社長って…? 見合いって何?」と不振がられた。

 秘書と実家のことを説明をすると、目を丸くして驚いている様子で。



「大丈夫、断るだけだから。前にもあったし」


「見合い、…行くの?」


「親の手前、こればかりは逆らえないっていうか…。一人暮らしをする条件だったから…」


「そ、っか…」



 その時の隆至りゅうじの悲しそうな顔がとても印象に残った。

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