涙とコーヒー

「大丈夫?」


「怖かったけど、大丈夫です」



 被害届を出して交番を出ると、そこには佐々木さんが待っていてくれた。



「もしかして、ずっと待っててくれたんですか?」


「僕もさっきまで事情聴取されてたんです。聞いたら水川さんも終わる頃だって教えてもらったんで、待ってました」


「ありがとう、ございます」



「行きましょうか」と、私の少し前を歩き始める。

 その大きな背中を最近は見慣れていた所為か、今になってホッとしてきて。

 次々に涙が溢れてきた。



「え、どうしたんですか?」


「すみません、佐々木さんの背中見たら安心しちゃって」


「そうですよね。あんな目に遭って怖かったですよね」


「自分の事なのに咄嗟に動けなくて。ホント、情けないです…」


「そんなの当たり前ですよ」


「あの、助けてくれてありがとうございます。何かお礼を…」


「あ、じゃぁコーヒーご馳走してくれませんか?」


「コーヒー?」


「はい。凄く飲みたい気分なんで」


「わかりました」



 佐々木さんがそう言って微笑む雰囲気に涙も止まり、私にも笑みが零れる。

 2人で行くことが当たり前になったカフェに立ち寄り、お気に入りだと言うブレンドをご馳走した。

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