出会い
「あぁ、あと2時間で迎えか…。あの無駄に大きい車と、いちいち実家に帰って戻ったことを報告するっていうのが面倒くさい…。実家じゃなくてアパートの前でいいのに」
「向こうの徹底ぶりが凄いな? 結婚を装うなんてよっぽど彼女と別れたくないんだろうな」
「私だってあなたと別れたくないですけどね~」
ハハッと私の目の前で優しく微笑む彼。
付き合いは1年ほどになる。
彼とは、電車で鉢合わせた痴漢を一緒に捕まえた事から知り合った。
いや、被害者は私じゃなく、私のすぐ近くに立つ女子高生を狙った痴漢だった。
目の前で起きている事がどうしても許せなくて。
すっかり怯えた女子高生の代わりに、犯人の腕を掴もうとグッと手を伸ばす。
「この人痴漢です!」
安っぽいネイビーのジャケットの袖を掴むと、私は声を荒げた。
それと同時に、「うおっ」と横から慌てた様子の男性の声がした。
その方向に視線を動かすと、何故かその男性も反対側のネイビーのジャケットを捕まえていて。
「僕も今、痴漢の手を掴んだばっかりで…」
ハハッと少し顔を赤らめた男性と2人、同時に痴漢の腕をそれぞれ高らかに上げていた。
停車した駅で私は女子高生に付き添い、サラリーマン風の男性は痴漢を拘束しながら駅員さんを探している。
私達、なんて連携の取れた行動なんだろう。
こんな頼りがいのある人が恋人、もしくは旦那だったら…。
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