本命

 高森と彼女さんの好みの間取りや防音設備がある部屋がなかなか見つからなくて難航したけど、新居として選ばれたのは30階建ての一番上の階だった。

 好みの間取りだったらしく、早速2部屋分契約を交わしていた。

 私はそのやり取りを隣で見ているだけだったけど。

 ワンフロアに2部屋しかない造りで、勿論部屋は隣同士。間取りは反転してる。

 内見に行った時、高森は満足そうにしていた。

 1DKと過ごしやすい場所に1人暮らしをしている私にとっては、この部屋は広過ぎて持て余してしまいそうだ。



「えっ、本当に契約してきたの?」


「うん。向こうが条件に合うっていうし、私が口出す事じゃないからね」


「なんか住む世界が違うなぁ」


「私だって同じ意見だよ。あんな家賃の額見たことない。申し訳ないから引っ越さなくてもいい気もするんだけどね」


「結婚の契約上それは出来ないんでしょ? 沙彩だってお嬢様なのに、質素が好きだもんね?」


「ハハッ お嬢様って。私はそんな柄じゃないもん。高森家は別格なだけ」



 早々に内見を終わらせ契約までしてきた私達は、お互いの恋人に会うべく今は別行動をしている。

 私も彼の家に遊びに来ていた。

 高森の車に近くまで乗せてもらい、信用問題になるから帰りも送ってくれると言うけど…。

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