高級車

 反対に、高森は上機嫌に話に乗ってお辞儀までしていた。

 彼女と今まで通り付き合える事に余程ホッとしたのか、その顔は隣にいる私にしかわからないように微笑んでいる。

 でもこの人、悪い人ではないんだろうけど…。

 お見合い相手にあんな話をするってことは、少なからず親に対して不満もあるんだろうか。

 彼女と結婚が出来ないのは、どちらかの親に反対されているからとか?

 まぁその辺は敢えて聞かなかったし、聞くつもりはないけど。



《 婚約したのにデートもしないっていうのも、確かにおかしく思われるかもしれませんね 》



 お見合いの日から数日後、連絡先を交換したのが早速役に立った。


 未だに不審に思っているのか、「匡高さんと会わないのか?」と父親に言われた事を高森に相談したら、外出の予定を立てたと連絡が入った。

 その当日は見た目にもわかるピカピカの高級車が実家の玄関までやってきて。



「う、わ…」



 若干引いた。こういうのは苦手だ…。

 正直金持ちの道楽を見せ付けられているようで好きになれない。

 高級車を乗りたがるうちの両親を見ていたからかもしれない。

 使い勝手も良くて小回りも効く、税金もガソリン代も安い軽自動車の方が私は好きだ。

 でもそこは演技をしなきゃならないので、エンジン音の静かな高級車から両親に手を振り、作戦の一つでもあるマンションの内見に本当に出掛けたりした。

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