第11話:「攻めの決意、リリアンナの提案」
秘宝の手がかりとなる古代文字の石碑を発見してから数日が経過した。リリアンナとカイルはその石碑を手がかりに、さらに森の奥深くへと進んでいたが、依然として決定的な場所にはたどり着いていない。
「カイル……このままでは、いつまでも貴族たちの動きに振り回されるわ」
リリアンナは焚き火を囲む中で、ふと口を開いた。いつもは慎重なリリアンナが、自ら意見を述べるのは珍しいことだった。カイルもその変化に気づき、彼女に視線を向けた。
「どういう意味だ?」
リリアンナはしっかりとカイルの目を見つめながら言った。
「今まで私たちは、ただ秘宝を守ろうと動いてきたけれど……それだけじゃ不十分だわ。ガレスの動きが激しくなってきている今、守るだけではダメだと思うの。私たちから、攻めに出るべきじゃないかしら」
カイルは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにその提案を真剣に受け止め、考え込んだ。
「こちらから攻める……つまり、ガレスの真意を探り、奴を倒すということか?」
リリアンナは力強く頷いた。
「そうよ。ガレスがどうしてこの地を狙っているのか、その真意を探らないと、私たちはただの防御に回るばかり。私たちが動いて、彼の陰謀を打ち破れば、この地だけじゃなく、私たちが生きる場所を自分たちの手で守れるわ」
リリアンナの言葉は、今までの彼女の態度とは大きく変わっていた。以前はカイルに守られるだけだったが、今は自分の力で戦いたいという意思を明確に示していた。
「守るだけでなく、生きる場所を勝ち取る……」
カイルはリリアンナの提案に真剣に耳を傾け、彼女の成長を感じていた。彼女はもはや、ただ守られる存在ではなかった。共に戦うための強い意志を持つ仲間となっていた。
「分かった。お前の言う通りだ。守るだけではなく、攻めに出るべきだろう」
カイルはそう言うと、彼女に向けて静かに頷いた。
「だが、ガレスの居場所をどう突き止めるかが問題だ」
リリアンナは少し考え込んだ後、再び提案した。
「彼の手下たちを利用しましょう。前に襲ってきた連中もいたし、彼らを追いかけてガレスの居場所を探り出すのよ」
カイルはリリアンナの提案に深く頷き、彼女の勇気と成長に感心していた。彼女はもう、恐れに立ちすくむだけの令嬢ではなかった。
「よし、それで行こう。奴の動きを把握し、先手を打つ」
◆ ◆ ◆
その夜、リリアンナとカイルは再び森を進み、ガレスの手下たちの痕跡を追っていた。リリアンナはカイルの後ろに付きながら、周囲の動きを警戒しつつ、少しずつ自信を持ち始めていた。
「私にもできることがある……」
リリアンナはそう心の中で呟き、これからの戦いに備えた。何があっても、カイルと共に前へ進む覚悟はできていた。
◆ ◆ ◆
深夜、森の中を進んでいると、ふいに遠くから焚き火の光が見えた。カイルはリリアンナに「静かに」と合図を送り、二人は慎重にその光へと近づいていった。
そこには数人のガレスの手下たちが焚き火を囲みながら何かを話していた。リリアンナとカイルは木陰に隠れながら、彼らの会話を盗み聞きする。
「……ガレス様は、辺境の秘宝を手に入れることで、王国の支配を強化しようとしているらしい」
「ただの秘宝じゃないらしいな。古代の魔法を宿した強大な力があるとか……」
リリアンナはその言葉を聞きながら、ガレスの真の狙いが徐々に明らかになっていくのを感じた。王国全体を支配するための強大な力――ガレスはその力を手に入れるために、手段を選ばずこの地を狙っていたのだ。
「それだけじゃない。ガレス様は、この地の人々を使って実験を行おうとしているらしい。秘宝の力を最大限に引き出すための……」
その言葉に、リリアンナは息を呑んだ。ガレスはただの野心家ではなく、この地に住む人々をも犠牲にして、自分の目的を果たそうとしている。
「カイル……!」
リリアンナは低い声でカイルに囁いた。カイルもその言葉に眉をひそめ、剣を握りしめた。
「ガレスは、単なる権力欲だけではなく、この地の人々を犠牲にしようとしている……」
カイルの顔には強い決意が浮かんでいた。彼らが戦わなければ、ガレスは必ずこの地を支配し、悲劇をもたらすだろう。
「行こう。奴らを尾行して、ガレスの居場所を突き止める」
カイルはそう言うと、リリアンナと共に再び森の奥へと静かに進み始めた。
◆ ◆ ◆
夜が明け、リリアンナとカイルは手下たちを追いかけ続けた。やがて二人は、古びた城の廃墟にたどり着いた。そこにはガレスが指揮を執る拠点があるに違いなかった。
「ここが奴の拠点か……」
リリアンナは強く拳を握りしめた。自分たちが戦うべき相手の正体を知り、今こそ反撃に出る時が来たのだ。
「カイル、ここからが本番ね」
リリアンナはカイルを見つめ、笑みを浮かべた。その笑顔には、強い決意と覚悟がにじみ出ていた。
「そうだ。ここでガレスの陰謀を打ち破る。そして、この地を守り、俺たちの生きる場所を勝ち取るんだ」
カイルもまた、その決意を共有し、二人はガレスの拠点に向かって静かに歩みを進めた。次なる戦いが、二人に迫っていた。
追放された令嬢、死神騎士に見初められ再び社交界へ スキマ @sukima_
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