第13話
ステージは“寂れた街”だった。
海外の街並みをイメージされたコンクリート製の建造物が並び、錆びれた階段も表現されている。
試合開始時、スナイパーなら直ぐに家の屋上へと登るけど、私も佐藤もアタッカーだ。先に見つけて攻撃を仕掛けた方が勝つ。
「────いた!」
互いに走ってる途中で姿を見つけると、スコープを使わずに乱射する。
正確性はないが足止め出来ればそれでいい。
けれど、それは向こうも同じだった。打ってきた弾を避けて角に隠れる。
──私に気付いた?
息を吐くと銃を構えながら相手の場所を確認した。
まさか打ってくるなんて思わなかった。これは尚更のこと射程距離が短い方が良いかもしれない。
佐藤が現れた位置から隠れる場所を探して全速力で周り込む。
居場所がバレようと佐藤が隠れている場所に向かうと、その場から離れようとする佐藤に私は直ぐに反応して狙撃した。
先取したのは私だった。
佐藤の姿が消えて、リスポーンへ送られたのだと分かる。
とは言え、油断は出来ない。
佐藤の動きは中務さんと結弦が認めるだけあって良い動きをする。
数日前にも似た人を見かけたが【Apollo】の動きを再現しているプレイに私は舌打ちを零したくなる。
佐藤の動きは私にも似ている分、先の行動が読み取りやすいが、よく避けるし、反撃も弾を怖れずにしてくるから、仕留めるのに時間がかかる。
反射神経や操作技術は既にプロ並みだ。
あぁ、本当にうざい。何でも持ってる奴って、どうしてこうもムカつくのかな。
「容赦ねぇなぁ」
ふと呟いた悠斗の声に、私は画面から目を離さずに心の中で文句を垂れる。
誰が容赦なんかするんもんか。
何度か佐藤を倒すと、リスポーンから出て来て間もないはずの佐藤から反撃を食らった。
「……あ?」
コイツ、いつの間にか後ろに。どこを通って来た?
スタート地点にあったリスポーンから復活する間に端にある地図を見る。
私はここにいた。方向からして、こっちとこっちのどっちからか……。
「渚の背後を取るなんてすげぇな」
「……悠斗うるさい」
「やべっ。渚、頑張れ」
「許さん、後で覚えてろ」
「うっ……!」
佐藤のことばっかり応援して、後で本気でパンチしてやる。
銃を長距離銃に持ち替えて、出来るだけ高い場所を通る。
確認したいことと、佐藤の水晶の場所を特定するために動き回ると、途中で佐藤の姿を見とめてライフルを構える。
佐藤に向けて見ると、弾は腕に当たって致命傷にはならなかった。
私は直ぐに銃を元に持ち替えて、佐藤のいる方へと向かう。
そして直ぐさま激戦が始まった。
「渚、乱れてるぞ」
「……むぅぅぅ」
結弦に言われて唸り声を上げる。
佐藤め。あと何回キルしたら諦めてくれるのよ。
それから数分後、制限時間による試合終了の告知に私は手を止めた。
キルの点数を見ると、3キル_VS_16キルで大差だったけれど、20キルを目指していた私には不服の結果だった。
「お疲れ様。佐藤どうだった?」
「強かったです。行動が予測つかない時があって……」
「佐藤くんは【Apollo@】と【NAGISA】に似てる分、既に先を読まれやすい。その点を克服してほしい」
「はい」
「──それで渚さんはどうでしたか?」
中務さんの言葉に思うような結果が出せなかったこともあって、「ふんっ」と悪態をつく。
特に何も言わなかったからだろうか、「悪くなかったみたいですね」と中務さんが言った。
それには言い返す言葉がない。確かに戦闘スタイル自体は悪くはなかったから。
それが余計に癪に障るのだけれど……。
「仲間入りを許してくれますか?」
「嫌だ! やっぱり気に食わないよ!」
ここまでくると殆ど駄々を捏ねているに過ぎないと分かっていても、気まずそうにする佐藤の存在は受け入れ難く、私は首を振っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます