春人side
朝早く起きてその日の予習をして、夜遅くまで復習をする。
一週間も続いたがあまり慣れない。意外とハードな毎日だった。自分の中には勉強しかなくなっていた。
でも、目標を考えると、いつも桜日がいた。桜日は俺がいないとダメだから。一緒に働いて、面倒見てやろう。十年も両親より一緒にいた仲だ。腐れ縁だと思っている。
勉強机の上に置いてある二枚の写真。退院した時、先生たちと両親と撮った写真。もう一枚は、俺と桜日があの桜の木の下で笑っている写真。
まだ俺と桜日が同じぐらいの身長だから、三年か二年前だろうか。懐かしさでふと笑みがこぼれる。俺がしっかり勉強して、桜日に教えてあげよう。そう考え、再びペンを走らせた。
すると、隣に置いていたスマホが鳴った。画面には母さんの文字。緑色のボタンを押し、電話に出る。
「もしもし、母さん?」
「春人!!今すぐ病院に来て!桜日ちゃんが…!」
サアっと血の気が引く予感がした。急いで立ち上がって部屋を出た。駅まで走り、切符を買って電車に飛び乗る。
母さんは桜日の意識がなくなったとしか言ってなかった。あんなに元気だったのに、どうしたのだろう。頭の中がぐるぐゆと渦を巻く。先生に連絡するのを忘れていた。教わっている先生に連絡をし、今日は授業に遅れることを伝えた。
改札を出て、早足で病院へ向かう。駅から病院まで、そんなに遠くない。胸が苦しくなってきたが、スピードを落とさず、病院まで向かった。
受付の看護師さんに事情を伝え、急いで二階へ上がった。
桜日の病室には白衣を着た先生たちが集まっていた。ただ事じゃないことは察した。
走って病室まで向かう。中から誰かの泣き声が聞こえる。入り口の先生たちはこちらに気づいたのかそっと間を空けてくれた。その間を通り、病室へ入る。
そこには、うつむいている桜日の担当医の先生と涙を拭っている俺の母さんと泣き崩れている桜日のお母さんがいた。
ベッドの上には変わり果てた桜日が眠っていた。痩せこけ、血色が良かった顔は青白くなっている。
ゆっくり桜日が横になっているベッドに近づく。
「桜日…、どうしちゃったんですか…。い、生きてますよね?」
そう先生に言った。口の中はやけに乾いていた。
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