第43話
「あんたら駅から歩いてきたんか?暑かったろ。茶でも一杯飲んで行きなよ」
親切な老人に冷たい麦茶をいただくと、流した汗と同じだけの水分を体内に入れて体が潤った気がした。
車が到着するまで、
「なぁオヤジさん、この熊の置物、オヤジさんが作ったの?」と奏太は店にあるものに興味津々。
奏太が手に取っていたの木彫りの熊だった。
「よぅ出来てるだろう?お前さんが言う通りわしが作った」
「すっげぇな!俺これ一つ買うわ」
すっかり老人と仲良くなった奏太。僕とは正反対で昔から男女問わず人懐っこいところはあった。見ず知らずの人ともすぐに打ち解けることができる。人見知りの僕からしたら随分羨ましい性格だ。
そんな奏太と老人がお喋りをしているさなかだった。
「こんにちは~、
カラリ…とまたも引き戸の音がして、青い制服を着た警官が姿を現した。
いかにも派出所勤務、と言った感じの警官にしては迫力の欠ける青年だった。地元の派出所のお巡りさんだろうか。
「ああ、お客さんですか?珍しいですね」お巡りさんは僕らを見て目をぱちぱち。
「ああ~。このお兄さんたちは東京から来なさったシシトウさんとこのお客さんだって」
山名と呼ばれた老人が受け答えする。
シトウです。と、もう訂正する気力もない。
「ああ、高台の…紫藤さんとこの……
もしかして紫藤さんのご親族ですか」
お巡りさんに聞かれて、僕は戸惑った。すぐに『そうです』とは言えない。だが奏太の方は
「紫藤 晋は俺たちの親父。俺らは息子」とにやりと笑って言うと、お巡りさんは慌てて
「このたびはお悔やみ申し上げます」
警官は神妙そうな顔つきで頭を下げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます