第42話


幾らこよみの上では秋とは言えど、幾ら東京から離れた田舎街だからと言えど、



9月後半の真昼は暑い。アスファルトに太陽が反射して容赦なく僕の体を照りつける。



少し歩いただけで滝のように汗が流れてきた。



まるで真夏のような灼熱の太陽が行く道を陽炎のように滲ませていて、僕は汗を拭いながら目を凝らした。



「なんっでこんな暑いんだよ」とすぐ隣を歩く奏太がシャツの胸元をぱたぱたさせながら根をあげる。



「あそこに案内所みたいなところがある。そこでちょっと休むか」



「案内所?あ、道の駅っぽくね?」



僕たちが目にしたその小屋みたいな場所は昔ながらの木造造りで、僅かなスペースに駐車場があった。



だけどその場所に一台も車は止まっていない。正直期待はできなさそうだが、少しでもいいから涼をとりたい。



カラリ、と古めかしいガラスの引き戸を開けると、店の奥まったところで老人が一人新聞を読みながらくつろいでいた。エアコンは効いているようで、入った瞬間爽やかな冷気が身体を包んだ。




道の駅と言ったのは確かなようだ。皿や湯のみなどの陶器...工芸品と言うのだろうか、それに混じって地元で取れる野菜が漬物にされてパック売りされていた。



「ああ、いらっしゃい」



人のよさそうな老人はにこにこ笑いながら、腰を上げる。



「あの…すみません。客じゃないんです。僕たちあの山の高台に行きたいんですが」



「高台……ああ、シシトウさんとこの…」



「いえ、シシトウじゃなくてシトウです」



「どうしたんだい?もしかしてオタクら……シシトウさんとこのお客かい」



シトウです、と言い返すのも面倒だ。



「ええ、そんなものです。あそこの高台に行きたいんですが、この辺にレンタカー屋とかありませんか」



「レンタカー屋?そんな気の利いたもんはねぇがよ、個人で保険のデーラーやってるところがあるからそこで借りれるか聞いてやるよ」



デーラー…ディーラーのことかな??



老人は親切そうに笑って、黒電話を手に取る。どうやらディーラーみたいだ。まるでこの場所だけ時間が止まっているような…悪い言い方をすれば古臭い、良い言い方をすればアンティーク調??この様子からすると、僕が想像したよりかなり田舎みたいだ。



「デーラー…って」と奏太が背後で忍び笑いを漏らしている。



「笑うな。もしかしたらこの状況を何とかしてくれるかもしれないだろ?」



「あー、はいはい。分かりました~お兄さま」



奏太がわざとおどけて肩を竦める。そんなふざけた奏太を睨んでいると、



「お兄さんたちラッキーだよ。今デーラーから車一台手配してくれるって。シシトウさんの名前を出したらすぐに」



この名前を嫌っていたが、悪いことばかりではないな。たまには役に立つわけだ。



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