第41話
僕は歩き出した。
「お前って変なところで前向きなのな」
呆れたように奏太も腰を上げて僕についてくる。
「“お兄様”」
そう言い直すように後ろを振り返ると、
「誰が呼ぶか。ばぁか」と生意気な返事が返ってきた。
一々腹が立つヤツだが、ここで言い合いしていても時間の無駄だ。
前を向くと屋敷が建つ山が遠くの方で聳え立っていた。堂々たるかまえで、その入り口はやはり奏太の言う通りかなり遠そうだ。
そこへ視線を向けていると、
「響」
ふいに奏太に名前を呼ばれて振り返った。
奏太はジーンズのポケットに手を突っ込み、僕と同じ方向へぼんやりと視線を向けていた。
「お前、親父が死んだって聞いてどう思った?
俺、すっげぇ嬉しかった。
たぶん生きてる中で一番。
俺は人としてどこか欠陥品なんだろうか―――」
奏太、お前が幾ら僕を「お前」呼ばわりしても、名前で呼んでも
僕たちはやっぱり兄弟だ―――
だって僕も同じことを
思ったから
欠陥品。奏太がそう言うのなら、僕も欠陥品なのだ。
欠落しているのは人としての情なのだろうか―――
それとも愛か―――
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