第34話


『子供が欲しい』と言う妻の意見に全て同意できなかった。



確かに子供を産むのは女性だから何とも言えないけれど。歳を重ねるごとに出産は大変になることは確かだ。



それでも40を過ぎても無事に元気な赤ん坊を産む女の人もいるし、授からなかったら授からなかったでそれも運命だと思っている。



そりゃ僕たちの間に子供が居れば、この心の中にぽっかりと開いた空虚を埋めてくれるかもしれないが…



でも、僕はそれほど強く願ってはいない。







この空虚を埋めることは―――きっと、誰にもできないんだ。







「ねぇ、あなた…」



妻の手が僕の肩のラインをなぞり、それが二人の中に存在する暗黙の合図だと気付いたが、僕は一歩下がって作り笑いを浮かべた。



「悪いけど、今日は疲れてるんだ」



暗にそんな気分じゃない、と伝えるも、



「そうやってあなた最近すぐ寝ちゃうじゃない」



妻がまたも目を吊り上げる。



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