第31話


『幸せ』と言うものを考えてみる。



それは当たり前のように溢れているのに、



人間は―――…気付かないまま日々を過ごしている。






例えば―――



東京郊外だけど、家(一年前に買ったマンション)に帰れば



「おかえりなさい、あなた」



優しくて美人な妻が出迎えてくれても―――





それは当たり前の光景で




幸せと感じるにはあまりにもありふれた―――




日常だ。




だけど『不幸』は突然やってくる。




それは予想もできないタイミングで。






突然に。







「ただいま、はい。頼まれてたプリン」



「わ。ありがとう」



妻がにこにこプリンを受け取る。それに対して僕は少しだけ申し訳無さそうな笑顔を作る。




反省しているフリをするのだ。



僕は店では真面目な社員。家では優しい夫を―――演じている。



本当の僕はきっと妻が知るより、ずっと冷徹で無慈悲で




酷い男だ。









だって最初から僕は





妻を愛してなど、





いなかったから。






僕の心にはいつもたった一人だけ





あの美しい“妹”が





棲みついているから―――



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