第27話
僕の父親はコンダクターで、産みの母親は日本でもそこそこ有名なヴァイオリニストであった。
偉大なるマエストロとヴァイオリニストの母親。
僕は言わばサラブレッドと言うわけで、小さい頃からヴァイオリンの英才教育を受けたが、残念ながら才能には恵まれなかったようだ。
その証拠に僕は一度として父親に褒めてもらったことはない。
父親はコンダクターとしても有名だったが、その一方で女性関係でかなり派手な浮名を流していた。
長男である僕(現在29、あと少しで30)と、
次男である奏太(29)
そして末娘の花音(26、明日で27)は―――
父親は同じだが、母親は全員違う。
僕の母とは僕を生んですぐに離婚したが、翌年奏太の母親(有名チェリストだった)と結婚、その二年後死別。
―――父親の度重なる浮気に絶望し、元々チェロの道しか知らないたおやかなお嬢様気質の二番目の母親は
自殺した。
奏太がチェロの道を捨て作曲家に転向し、僕に続いて家を出たのも、このところが原因だろう。
そしてその自殺の原因を作ったのが、三番目の母、花音の母親との不倫関係にあったのは言うまでもない。
でも、不思議なのが、奏多の母が亡くなる前から花音の母と不倫をしていたのにも関わらず、花音の母と籍を入れたのはそれから十年が経っていた。
まるで昼ドラになりそうなドロドロ女関係に僕たちはそれぞれ辟易していたが、三番目の母親と再婚するときには、もう誰も何も言わなかった。
「またか」
たった一言。ようは呆れていたわけだ。
よくやるよ。次から次へと。まぁその血を一番色濃く受け継いだのは、皮肉にも奏太みたいだが。
あいつの女好きは間違いなく父親譲りだな。
それでも
三番目に迎え入れた、その母子を憎まなかったのは、
花音が稀に見る美少女で、可憐で、
優しい女であったからだろう―――
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