第23話


「どうしたんだよ、紫藤。さっきから変だぜ?」



同僚の一人に指摘されて、僕は慌てて近くに置いたおしぼりで口元を拭った。



「いや、ちょっと考え事を…」



あまりに突飛な発言に驚いたのです。







だってあの二人は―――兄妹だ。








特別に仲が良いわけではないし、かと言って特別に仲が悪いわけでもない。



世間一般的な仲だ……と、思う。



奏太―――……まだ花音と会うことがあるのか…





僕は花音と―――いや…妹と




もう十年程




会ってはいない。




最後に彼女を見たのは彼女が17のとき。彼女はまだ高校生だった。



僕は二十歳。誕生日を迎えたその日に―――






僕は




家を出た。







以来、奏太を除いた紫藤とは関係を絶っている。



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