第22話


作詞作曲家。



自分で作った曲をミュージシャンに提供する、業界ではかなり売れっ子作家KANATAは



本名、紫藤 奏太しとう かなた



僕のいっこしただから二十九歳。都内の高級マンションに住んでいる。



地味に地味に…平穏に……を望んでいる僕とはまるで正反対の、華やかで煌びやかな世界に居るにも関わらず、



あいつがマスコミに顔を出さない理由、それは





自分が“紫藤”の一族であることを知られたくないからだ―――



あいつもまた紫藤の名前と血に縛られている一人だ。





『家を出てまで親父あいつの名前に縛り付けられたくないっつうの』





と、前回…会ったのいつだっけ……とにかくあまり頻繁に行き来しているわけじゃないから、あいつが今何の仕事を手がけて何をしようとしているのか分からないけど、



前述した台詞はあいつが会うと必ずぼやく言葉その①



僕もキミが弟であることを知られたくないよ。…と、僕も心の中でぼやくが、もちろんそんなこと…



たまに言ったりする。兄弟仲は悪い方だと思う。



「あ、そー言えばさぁ、だいぶ前に噂になったよね」



急に話題を変えられて僕は目をぱちぱち。



「噂?」



何の噂??







「あ、そうそう~!



天才ヴァイオリニストの“花音”がKANATAとお泊りデートしたとか、してないとか?




曲を提供したとかしてないとか…」







ゲホッゴホッ




今度こそ僕は盛大にむせた。



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