第18話
―――…「…とう、紫藤。おぅい大丈夫かぁ?お前行くの?」
同僚の一人が僕の前で手のひらをひらひら。
「う、うん」
まばたきをすると、まるで泡のように“彼女”の姿が消えた。
「行ける?急に誘ったからどうかな~って思ったけど」
「紫藤には可愛い嫁さんが家で待ってるもんな♪」
またも茶化すかのように言われて僕は苦笑い。
「行くよ。今日は―――…
飲みたい気分なんだ―――」
僕は作成途中だったメールを閉じて、スマホをスーツに仕舞いいれた。
指に挟んだタバコの先から紫煙が立ち上っている。
空へ空へ―――ひたすらに昇っていくその様を見ても、僕の気持ちはその反対で
下へ下へ―――ひたすらに沈んでいく。
引きずり込まれる。
過去の自分に。
呼び寄せられる。
あの恐ろしいまでの感情に―――
愛してる
愛してる
愛 シ テ ル
僕が“彼女”…いや、
“妹”に向けたあの言葉も
たった一度、この手で触れた彼女の肌の香りや体温―――…思い出も
たった一度の過ちも
酒で流せたら
そうなれば、どんなにか楽だろう。
だけどそうにはいかない。
どんなことがあっても僕が犯した罪は―――消えないのだ。
「私から逃げられない」
またも彼女―――
“
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます