第17話
紫藤の家を出、まるでその血から逃れるように全くの別世界で生きていこうとしても、
“彼女”の誕生日を忘れることはなかった。まさに明日。
彼女の誕生日。
一つ年を重ね、また一つ……確認するように指を折って数え
彼女は今年でとうとう27歳。
結婚は―――…したのだろうか…
子供は……
色んな考えが浮かんでは消える。
その考えは彼女の“兄”ではなく、一人の“男”として
“心配”と言うより、醜悪な嫉妬心だ。
僕の中の正直で、しかし正気とは思えない醜い嫉妬心が首をもたげて、
またもドキリと心臓が波打った。
僕は暴れまわるように反応する心音を宥めるように、その場所にそっと手を置いた。
「私から逃げられないわよ、響兄さん」
“彼女”にそう言われた気がした。
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