第9話

体調不良で二次会はドタキャン。

ホテルの最上階のバーで一人、カクテルを飲んだ。


バーは全面硝子張りで、夜景のロケーションは最高。

アルコールやカクテルの種類が豊富でどれを飲もうか迷った。



私は眼鏡を外して、ぼんやりとした視界で夜景を見つめる。

全ての光彩が霞んで見えるけど。それはそれで味わいがあった。


「一人か?」

低く響く甘い声。


男のフレグランスが私の鼻腔を擽る。

私は思わず眼鏡を掛けて彼の顔を見た。


切れ長の瞳に眼光は優し気だけど、凛とした強い意思は孕んでいた。彫りが深くイケメンの部類。

長身で略式の黒のスーツに身を包んでいた。

彼もまた披露宴に出席した帰り、ふらりとバーに立ち寄ったような雰囲気。

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